プライベート・セッション

shit_pieのセラピーブログ。

Buy Nowers Club Vol. 7 | at dues 新宿, Dec. 27 2017

John Maus - Screen Memories

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2011年の傑作We Must Become the Pitiless Censors of Ourselvesから、気づけば6年もの月日が。いわずもがなアリエル・ピンクの親しき友人で、政治哲学者で、皮肉屋で(ピッチフォークのインタヴューで炎上)、自称「極左極左極左」主義者。自作のシンセサイザーで奏でられるのは、ダークでドリーミーなシンセポップ。なのにどうしてこうも気味の悪い響きをしているのか、どうしてこうもアウトサイダー感が滲み出てしまうのか。ジョン・マウスの音楽は、ジェイムズ・フェラーロと田島ハルコとハイプ・ウィリアムズが共演しているかのようだし、イアン・カーティスが降霊した人生のようにも聞こえる。彼はライヴで、激しく頭を振りながら低い声で唸る。「オー、イェー!」。だがそれはちっともたのしそうには聞こえない。むしろ苦しみもがいているかのようだ。

 

Yves Tumor - Experiencing the Deposit of Faith

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イヴ・ツーマー(腫瘍)ことショーン・ボウイ。PANからリリースした2016年のSerpent Music(蛇の音楽)で脚光を浴びたクィア。そのファッションにはアルカを重ねずにはいられないし、事実、Hood by Airのショウへの参加経験も。その音楽はサンプリングの快楽主義に亀裂を入れる、いびつな脱構築ヒプナゴジック・コンクリート・ミュージックとでも呼ぶべきもの。あきらかにヴェイパーウェイヴの影響下にある霞がかったサウンドはビルボード・ホット100を独占するトラップやR&Bを茶化しているようにも聞こえる。ひっそりとリリースされたこの謎めいたデータ・コンピレーション(WAVとAIFFとが混在する雑さ)はアルカやガイカよりもザ・ケアテイカーやグルーパーと比較されるべき? そんな本作をTMTは2017年のフェイヴァリット第2位に選出。最近は坂本龍一のリミックス・アルバムに参加というニュースも。作品は否応なしに批評的だが、ライヴはフィジカル。

 

Downtown Boys – Cost of Living

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うまいとは言いがたいサックスがシンプルなフレーズを吹き、ディストーション・ギターががしゃがしゃと鳴り、ヴィクトリア・ルイズがスペイン語訛りで叫ぶ「壁は......ただの壁だ!」「ファック・イット!」。ダウンタウン・ボーイズは怒っている。なぜかって? 誰もこの理不尽に対して怒らないからだ。Sub Popとサインした極左バンド、ダウンタウン・ボーイズの新作のタイトルは“生活費”(ちなみに、前作のタイトルは“完全なる共産主義”)。言うならばこれはケン・ローチの『わたしは、ダニエル・ブレイク』やダルデンヌ兄弟の映画のパンク・ロック・ヴァージョンだ。いまもっともザ・クラッシュ、そしてジョー・ストラマーに近いのは彼女/彼らのはず。狂乱のパンク・ダンス・パーティーにこそ粗野なパワーが宿るのだ、醜悪な社会政治秩序や不均衡な自由主義を打ち壊すのだとダウンタウン・ボーイズは言う。フガジのガイ・ピッチオットがプロデュース。